「にゃあ」
雨が降る、寒い夜。
酒を飲みすぎて気分が悪い自分。その耳に、か細く、猫の震える声が届いた。
「…にゃあ」
「俺んちには先客がいんの」
頭に過ぎった、白く大きな犬。本当は狗神だったと最近知った。薄いぼろきれに身を寄せる仔猫は、もう一度、にょおんと鳴いた。その場に屈んで、背中に触れてみる。泥が染み付く茶色の毛は、元は白かったらしい。雨粒で体が冷えているらしく、その小さな体は震えていた。ゆっくり開いた若草色の目は己の瞳をじっと見つめ、小さく、くしゅん、とくしゃみをした。
「ほんっと駄目。そんな同情させようとしても駄目」
「くしゅん」
「…あー…銀さん酔っちゃってて自分の腕の中が見ーえーなーいー」
腕の中の仔猫は、瞳を閉じて、今度は大きく欠伸をした。
夜露に濡れた仔猫
( いまは、あたたかいけれど )