―――温、かい。
腕の中で、仔猫は安堵した。良かった、さっき拾われたのは夢じゃなかったんだ、と。目を細く開いて見ると、まだ日も昇らない早朝のようだ。確認して、もう一度顔をうずめる。寒い。少しすると、がらがら、と引き戸を開ける音がした。どうやら、この拾った人間の家に着いたらしい。
「おーい神楽ー居たら新八タオル持って来いタオル」
「んー銀ちゃん?それ…猫アルか!?」
「どうしたんですか!震えてるし…」
だからタオル持って来いっつったろ、と少々呆れ気味に言うと、慌てたようにして奥に駆けて行った。間もなくして新八が持ってきたタオル。それを腕の中で包んでやると、仔猫は最後に一鳴きして、また眠ってしまった。タオルと、その中の仔猫を一度ソファに置いて、さて、と髪に寝癖のついたままの二人を見る。
「こいつを洗うぞ」
「えぇ!?明日にしましょうよ!それに寝てるのに可哀想です!」
「まだ朝日も昇ってないのに近所迷惑アル!」
「窓を見ろ窓を!朝日なら出るだろ、がぁ!?」
窓を見ようと、視線を移す途中。ソファの上の仔猫が、白く発光する。眩しさに目を閉じ、もう一度、目を開いてから同じ場所を見ると、そこには、長い髪で小柄な少女がタオルに身を寄せていた。泥が染み付く茶色の毛は、元は白かったらしい。ゆっくり開けた若草色の瞳は、三人をじっと見つめる。神楽は、おぉ、と関心した風だが、新八と銀時は口を大きく開け、そのまま固まる。
彼女は猫だったのだから勿論服など着ているはずもなく―――長い髪が体を隠しているのがせめての救いだ―――新八と銀時は男、な訳で。
「か、神楽、お前がこいつ洗ってくれ…頼むから早く…!」
「銀ちゃんいいの?じゃ、洗ってきますヨー♪」
鼻歌を歌いながら、仔猫…いや、少女の手を引きながら神楽は風呂場へと連れて行った。行ってしまったのを確認し、ソファに腰掛け、互いの顔を見つめる。
「…銀さん」
「何、新八君」
「またとんでもないもの拾ってきちゃいましたね」
「言うな」
怖がらないで、甘えてごらん
( 震えが治まって、心が温かくなった )
(20091019 またもや短すぎた)