「銀さん」
「んー何ー?」
「私、恩返し出来た?」

 ソファに寝転がりながら、ジャンプを読む彼に私は問うた。問われた彼は、その言葉に、あー、と悩んでいるような声を出す。ちら、と此方を一瞥して、視線はジャンプへと戻った。

「ま、よく働いてくれたとは思うけどな」
「そっか」
「風邪引いたり階段から落ちたりバナナの皮に滑ったりしなけりゃな」
「いやバナナの皮には滑ってないけど」

 つまり、恩返しは出来たのか?出来ていないのか?…どっちなんだろう。出来てなかったのなら、何か悪い気がするな。


「なに?」
「恩返しはこれからやりゃいいだろ」
「…私、そろそろ星に帰ろうかな、って」

 やや間があってから、ふうん、と言葉が返された。星で家族が待っている。そろそろ帰らなきゃ、と思いだしていたのだ。でも、と言葉を続ける。

「恩返ししなきゃ、だし、ここに居るよ」
「あ?帰っていいって」
「…え?」
「分かった分かった泣きそうなチワワみてぇな目すんな」

 彼は、はぁ、と溜息を吐きながら、ソファにジャンプを置くと、此方に目を向け、それから頭を撫でてくれた。なんか、この人私の頭をよく撫でる。嬉しい、が。

「…銀さん、私恩返しのためだけに残るんじゃないからね?」
「どうゆう意味?」
「それは、銀さんがす…」
「す?」

 す。その先が出ない。たったひとこと、言うのがとてつもなく恥ずかしい。す?―――その先を聞く銀さんの笑顔が、何処か怪しい。絶対分かってる!この人!

「すす、すすすすすすすすきやき!」
「ふーん?すきやき?」
「きょ、強調しないで…!」





ずっと一緒にいるよ
( あのね、私は… )







(091115 最終話)