「へーすけ!昼飯食おうぜ!!」
「ひ、ひるめしって・・・も女子なんだしさ、もうちょっと女っぽくさあ」
「あは、冗談だってば!女子高生ってこんなもんっしょ?ね、沖田先輩」
「ていうかさっさと行こうよ。新八さんがさっきから焼きそばパン焼きそばパン五月蝿いんだけど」
「だって早く行かねえと売れ切れるんだぞ!?」
「ぷぷっ!新八せんせ大人気ない!」

 このテンションの高い女子は。一応、俺の彼女だ(何時の間にかこの事は校内に広まっていた)。この「一応」ってのは、こいつが男女問わず広い交友関係を持っていて、誰にでも平等な態度を取るからだ。それは彼氏である俺にも言える。正直、一ヶ月位前から付き合い出してはいるけど関係は他の奴らとそう変わんねえ、気がする。
 時々、本当に俺の事が好きなのかよ、って思うことがある。こいつ、絶対俺のこと特別視してないだろうし。でもそれを言って心が狭いって思われたくねえし、何よりは二股とか絶対許さない奴だ。

「俺は彼氏だもんな」
「?え、いやそうだけど?」
「・・・・・・どうした平助。先程から一口も進んでいないぞ。要らないのなら俺が頂くが」
「いや大丈夫大丈夫。つうか総司、と何の話してんの?」
「ん?なんでもないよ」

 総司が悪戯っぽい笑みを浮かべた。にやり、って音が付きそうなやつだ。・・・この顔に良い思い出が無いんだけど。
 「平助!」 に呼ばれて彼女の方を見ると、至近距離に箸で挟まれたタコさんウインナーが現れた。御丁寧に、爪楊枝かなんかで顔まで描いてあって、なかなか愛嬌がある。まあ足の数は二、三本足りないけど。

「特別にタコさんをお一人様差し上げよう!」
「お、おう。ありがと・・・・」
「・・・・・・・間接キスだな」
「ぶっ!!左之さん五月蝿い!」





*





 遅い。
 学校の帰り道、校門の前で一人立っている俺。遅い、って言うのはまた例の彼女なわけだが。いつもならとっくに一緒に下校している時間なのに、あいつは全く来る気配が無い。今日何かあるって言ってたっけ、と俺が首を傾げていると、ポケットに入っている携帯電話からお気に入りの着メロが流れてきた。
 からの着信だ。
 何かあったのかも、と嫌な予感が頭を過ぎり、慌てて通話ボタンを押して携帯を耳にあてた。

「もしもし、平助ー?」
、今何処に居んの!?」
「うん、今ね、やっと沖田先輩が部活終わったからさ。先輩の家に行こっか、ってとこ!」
「・・・・・は?」

 俺は思わず「総司んち?」と言葉を繰り返して彼女に聞き返した。そんなの初耳だ、聞いてない。それに対し当のはと言うと、「言ってなかった?」とあっけらかんと言ってのけた。

「でね、電話した理由なんだけど」
「お前さ、そんなに俺を怒らせたいわけ?」
「・・・・平助?」
「いっつも俺の一方通行だ!お前は俺の彼女じゃねえのかよ!?」

 俺は声を荒げて電話の向こうにそう一頻り言うと、一旦黙った。だって、男友達の家に遊びに行くなんて、彼氏のいるやつがしていいはずがねえ。
 だから、俺は悪くない! ――俺は、俺自身の心の後悔している部分にそう言い聞かせると、彼女からの返事を聞く事も無く一方的に通話を切ってしまった。開いたままの携帯のディスプレイには、一ヶ月くらい前にと一緒に行ったテーマパークで撮った二人の写メの待ち受けが映っている。
 ぱたん。携帯を閉じてポケットに入れると、俺は自分の帰路に着いた。
 やっとの思いでと付き合うことになったって言うのに、その幸せを自分の手で壊してしまった。あんな自分勝手なことを言って、彼女を傷つけてしまったかもしれない。
 やっぱり、後悔をしないなんて出来るはずがなかった。

「待って!」

 の声だ。
 なんとなく後ろから聞こえた微かな声に、俺はそう直感した。そんなわけない、と思いながらも淡い期待をして振り返ると、校門から慌てた様子で出て来たと丁度目が合った。髪が乱れてるって言うのに、今の彼女にとってはどうでもいいみたいだ。
 俺は暫く、歩くことも忘れてのそんな姿に視線が釘付けにされていた。さっきも言ったみたいに、いつも俺の気持ちだけが一方通行で、あいつがあんな風に俺のためだけに走ってるのが実は素直に嬉しいと感じてしまったからだ。 

「平助、ごめん!沖田先輩のことは、男友達としか思ってないから・・!」
「・・・・
「ごめん、ごめん・・・!」

 顔を俯かせて、何度もそう繰り返すの肩に俺が優しく触れると、彼女はそっと顔を上げた。いつもの明るい笑顔は無く、不安そうに俺の次の言葉を待っている。
 俺はそんなの頬に、一瞬触れるだけのキスをした。

「へ、平助?」
「俺こそごめんな。俺のために走ってくれて、正直すげえ嬉しかった」
「平助、怒ってたんじゃないの・・・?」
「怒ってた。でも、言っても聞かないだろ」
「うっ・・・・・」

 もういいって、と俺がの髪をくしゃりと撫でると、彼女は少しずつ顔を綻ばせていった。








さよならセンチメタル
ネガティブな気持ちにバイバイ!




(100925 リクエストで、「学生パロ、女子高生、平助の彼女」です。こんな拙いものでよろしければ・・・!)