空はただ、どこまでも青く。
「っうわ」
少しでもバランスを崩せば、それに呑まれてしまいそうで。
「おま、危ねえよ注意しろよ馬鹿!」
言いようの無い不安と歓喜の中、それでも、不安定であっても。貴方と、貴方の芸術品に乗って。それから落ちかけても、伸ばしたこの手を、貴方が掴んでくれるから、怖くない。
白い粘土で出来た貴方の鳥は、貴方の黄色い髪と黒いコートをコントラストとして、強調させる。それが、今の私にはとてつもなく眩しかった。
どこまでも続くこの空と、どこまでも澄んだ貴方の瞳は綺麗な青色をしていたんだ。
「なんでわざわざ遠出するんですか!?折角、空いた時間は甘味処に行こうと、」
「文句たれんじゃねえ!先輩の言う事は大人しく聞け!」
ぎゅっと、強すぎるくらいに私の手首を握り締める貴方の掌は、私と違って、心までも温かくするみたいだった。――可笑しい話だ。だって私達は、皆、犯罪者なのに。それは勿論、私だってそうだ。温かい気持ちなんて、ああ、二度と無いだろうね、って自嘲気味に呟いたはずだったのに。
いつの間にか、
「いいか?掴まってろよ、」
「・・はいはー・・・・ひっ」
がくん、と、突然粘土の鳥が羽ばたくのを止めて、勿論それに遵って乗っていた私たち自身も急降下した。柄にも無く、忍のくせに、私は小さく悲鳴を漏らして。目をぎゅ、と閉じた。ひゅるひゅると、風の音が耳に入る。なんで。なんで、なんで!柄にも無く、必死に私は同じ言葉を連呼する。隣の貴方が、そんな私を笑い飛ばした。
目を開けて、景色を見てみろ。
言われたとおり、そ、っと恐る恐る瞼を開ける。太陽の光が、貴方の髪が、目を眩ませた。そんなのから、視界に慣れた頃。
「・・・・・」
「すげえだろ?・・うん」
眼下に望むのは、やっぱり青の海で。私の見据える先では、水平線と空がひたすらに続いていた。想像もできないくらいに大きな二つは、同じ青で溶け込んでいて。自分が落ち続けている、というのも忘れて、始めてみるこの景色に、驚くと共に、すごい、と歓心した。
何も言わず、言えず。私は、いつの間にか再び動き出した粘土の鳥の上で、私の言葉を待っているらしい貴方を目に映す。貴方の、その瞳も組織から渡された指輪も、青。空も、海も、全部。
「青が、好きになれましたー」
「・・?よく分かんねえぞ」
「いいんですよー・・分からなくて」
目を伏せて、それから、ふと浮かんだ疑問を口にした。
「何で、連れて来てくれたんですか?」
「てめえが海に行ってみたいってガキみたいに五月蝿いからだ。何にも集中できねえんだよ・・これで満足か?」
「・・感謝します。でも喧嘩は買いますよ」
実年齢より幼く思わせる貴方の言動は、ちゃんと聞けば、優しい棘がある。
この色は、貴方の色
(100225 好きな歌よりシリーズ6.曲名より)