「私、今日は学校・・・えっと、勉学を教わる所へ行くので、くれぐれも外には出ないで下さいね」
「それって絶対行かないと駄目なのか?」
「何時帰ってくんの?夕餉までには間に合う?」

 朝食をとりながら元親さんと猿飛さんに説明する私。今日は連休明けの平日なので、学校があった。正直三人を残して学校に行くのは心配でたまらないが、日本国民である以上教育の義務に逆らうことは出来ない。まあ、彼らも子供じゃないしそこまで不安がる必要は無い、はずである。(あれ、元親さんが機械を分解している情景が一瞬頭の中に)
 心配していると言えば――結局、昨日の夜に竹中さんの枕元へ置いておいた夕食はひとかけらも減っていなかった。また食べていなかったらしい。私の眉間に、自然と皺が寄る。ちなみに、今朝は未だ竹中さんを一度も見ていない。先程、起こそうと部屋に入ろうとしたら「来るな」と言われてしまった。

「質問多いですよ・・学校は義務です。夕暮れ時には帰ってきますんで、夕食には間に合います。ただ、昼食は作れそうに無いので」
「『れいぞうこ』から何か出せばいいんだな?」
「はい」

 すごいですね、と私は寄せていた眉間の皺を緩めて破顔する。するとつられてか、元親さんも褒められた子供のように照れ笑いした。
 間もなく朝食を食べ終わると、食器は洗う時間が無いのでキッチンの流しへ元親さん達の物と一緒に重ねておいた。そして時計を確認し、勉強に使っている部屋(実家に居た頃の、私の部屋の物はほぼ全て移してある)まで行くと学生鞄を取り、全身鏡で制服や髪の乱れをチェックする。そういえば、この鏡から元親さんがやって来たんだっけ。つい一週間ほど前のことだが、少々懐かしさを感じる。
 部屋を後にした私は玄関まで早足で歩くと、ローファーに足を入れる。そしてリビングの方に振り返り、少々声を大きくして言った。

「行ってきます!」

 突然の言葉に驚いたのか、リビングの方で何か部屋の物を漁ろうとしていたらしい(おそらく)元親さんの慌てたような音が聞こえた。そして、リビングの方からひょっこり顔を覗かせた猿飛さんが、にっこり笑顔を貼り付けて私の言葉に返してくれる。

「行ってらっしゃい。気を付けてねー」

 気持ちはあまりこもっていないようだったが、それでも私は少し嬉しかったので笑顔を返しておいた。





一でも喜べること
(物事が楽しくなる見かた)








☆100708 短いですね(他人事