「・・・・・・・で、お前は今まで何してたんだ?」
「此方の、佐助とのんびり話をしていてな」
「どうもー」

 取り敢えず、来る時に使った舟で鬼ヶ島から港町へと戻ってきた御一行。数羽のかもめが鳴きながら、彼らの頭上を飛んでいる。宗兵衛は、頬を伝う汗を手で拭うと空を見上げた。鬼ヶ島に居た時にはあんなにも空が暗く感じたというのに、此処のそれは何処までも青い。

「Who are you? ったく・・お前がいない間に、俺達が苦労して宝を貰ったんだぞ?」
「貰ったっていうか・・・天狗の兄さんが、鬼さんを俺に押し付けて盗んできただけじゃん」
「で、こんな盗んでどうすんだよ?」
「よし宗兵衛、これ全部やろう。そして佐助に己の町まで送ってもらえ」

 さり気無く政宗に言葉を無視された宗兵衛は、の言葉に益々頬を膨らませた。折角だからもう少し一緒に居たかったのに、やけにあっさりと告げられた別れの言葉。まあ要するに、彼は単に拗ねているだけなのだが。
 そんな宗兵衛の気持ちを知ってか知らずか、はやんわりとした微笑みを浮かべると、「また会いに行く」と安心させるようにして言った。

「・・・・分かった。つー訳で宜しく、佐助、さん」
「あーやだやだ。さんが付いて来てくれって言うから何かなって思ったらさ、子守なんて」
「てめえにゃそれがお似合いだ馬鹿。安心しろよ、こいつには俺が居る」
「ふうん。また随分と、頼りない守り人だね」
「案ずるな。いざとなれば、自身は己で守るさ。それに、」

 さらりとの口から出た言葉に、今度は政宗が沈む。そんな彼の肩を、宗兵衛は優しく叩いた。「気にするな」と言いたいのだろう。

「まだ、ちゃんとした挨拶をしていないからな。ついでに、暫く元親の元で厄介になる所存なのだが」
「I see. 俺も、小十郎の顔は見飽きたからな」
「彼奴も、世話を焼いているだけだと言うのに可哀想なだな」
「じゃ、俺様帰るね。今度ウチの寺にも来て下さいね。美人は大歓迎!なんちゃって」
「っふふ・・・相変わらず世辞の上手い奴だ。が、そういう言葉は想い人に言ってこそ意味があるのでは?」

 ゆるりと口角を上げ微笑しながら言った。宗兵衛と政宗は、彼女の「想い人」という言葉に反応すると悪戯を思い付いた子供の様に笑いを浮かべながら、佐助に「どんな人なの」と詰め寄る。そんな彼らに、佐助は遂に面倒になったらしく宗兵衛の小さな体を抱き上げると「じゃ」と整った顔に笑みを浮かべて地面を強く蹴り、風を巻き起こして消えた。

「人も、飼い馴らされた妖も・・・言うほど悪くないではないか」
「っ」

 ふわり。
 の漏らした笑みに、政宗は思わず目を見開いた。彼女の笑顔は人形の様な形の良いもので、他人に好意的であると思わせるためのものだった、が。今のそれは、まるで自分は楽しいと言っているようで。「花が開く様」という表現が似合った。人間味を帯びている、とでも言おうか。

「お前、かなり影響されたよな」
「む?・・・今でも、ほんの気まぐれ・・遊びのようにしか思っていないぞ?」
「そうかい。ま、そういう表情見れんのは嫌じゃねえけどよ」
「早く行くぞ。さめざめと泣いている元親を慰めてやらないとな」
「くくっ・・・・そうだな」

 鬼ヶ島へ向かうため、再び舟の櫂をこぐのは、矢張りと言うか政宗の役目だった。手段が舟なのは、人目があるので仕方が無い。

 そして鬼ヶ島に着くと、門番は達の顔を見ただけで通してくれた(とは言っても、門は既に全壊しているのだが)。ちなみに付けていた面は、一旦鬼ヶ島を離れた際に外している。顔馴染みの元親の部下達は、大変だったのだと泣きながら迎えてくれた。一番暴れていた政宗は、わざとらしく視線を逸らした。
 通された元親の部屋。政宗は、落ち込んでいる元親をからかってやるつもりだったのだが、あまりの暗さに言葉を失った。

「ああ?何だ来てたのかお前ら」



笑えよ!鬼ヶ島の鬼が、ざまぁねえってな!畜生!」
「ほう・・・分かった。・・・・・っふふふ、ははははは!鬼ともあろう者が、何と言う体たらく!」
「んな大切なもんを溜め込んでるから悪いんだよ!HAHAHA!!」
「腹立つなお前ら!そこは慰めろよ!!」
「心得た。・・・・・元親、気を落とすな。宝集め、私も手伝ってやる」
「Don't worry... 宝だって、お前と一緒に居た時間を忘れないだろうよ」

 ひくひくと、必死に怒りを抑えつつ、元親は取り敢えず愚痴を聞いてもらおうと二人に向き直った。

宝を盗られた鬼の末路

聞いてくれ!桃太郎とか言う奴が、

100511//最後、元親があまりにも可哀想な気が