変な人の子に会った。
 あの頃住み憑いていた、豊作の神を奉る神社。あちこちが壊れていたりして、人に忘れ去られている廃れた神社のようだった。だから、私のような者が、人(を含めた生ある物全て)から身を隠すには打って付けで。誰も来はしないだろう、そう思っていたが、案の定、来た。その瞳の奥には、好奇心の色が見え隠れしていた。
 神社の屋根に座り、子供を見る自分と、下から此方を見上げる子供の、視線が重なった。

「人の子よ、何用でこの廃れた神社へ参った?」
「貴様、魑魅魍魎の者か?それとも、神か?」

 問いに返された、問い。
 年の頃は七つ、八つほどで、まだまだ幼い。ちらり。少年の着物は、どう見ても安物ではなく。にやり、と己の口角が上がった。

「人の子よ、今一度問おう。何用でこの大神の神聖なる場所へ参った?」
「・・・?では、神なのか?」

 ほんの出来心。
 あやかしである自分を、その神社に祀られた神だと容易く騙された子供に向けての罪悪感など、毛頭なく。騙すことに躊躇いは無い。何故か?―――理由は簡単だ。

神のふりする狐さま

こっちは狐。騙される方が悪い!

( 091125 短めに )