少年は、やはりまだ元服のしていない年のようだ。幼名で、松寿丸というらしかった。神社のある山のふもとに住んでいる、毛利家という(我等妖の中では)有名な退魔師のお家柄で。退魔師。関わって、悪いことはあっても良い事など無い。話しかけないべきだったか、と今更ながらに後悔する。
 今は、私の事を"神"などと信じてはいるが、成長するにつれて気付くだろう。そうすれば、滅せられてしまうだろうし。世の中には、退魔師や陰陽師、巫女などと契約を交わす妖もいるらしいが。私の中に、そんな選択肢など無い。
 そんな私のことなど気にも留めず、少年松寿丸は七日に二日、神社に来るようになった。たまに、油揚げを手土産にして。

「―――そして兄上は、見事妖怪輪入道を退治なされたのだ!・・・聞いておるか、?」
「ほう。悪霊に憑かれたという老人を除霊したと?それは尊敬に値する」
「違う!霊に憑かれた老人の話はとうに終えた!貴様話を聞いておらんかったな!?」

 全く、話にならぬ!
 そう吐き捨てると、油揚げを包んでいた笹の葉を握り締めてこちらに背を向ける松寿丸。むす、と頬を膨らませ、精一杯怒っている顔を作っているのは面白い。毎度、似たような別れ方をしているのにも係わらず、彼は三日ほど経った日の夕方にやって来るのだ。ふ、と小さく微笑む。

「Ah... つくづくあんたはいい趣味してるぜ。Is it fun?」
「天狗よ、私は海の外の言葉を理解できぬと申したはずなのだが」
「Ha! sorry.人間をからかって楽しいかって聞いてんだよ」
「楽しい。少なくとも神隠しなどと云うものよりは、な」
「俺はただ、人間の文化を説明させただけだぜ?」

所詮暇潰しの遊戯

童が去って、鴉

( 091126 年齢差?それはあの、天狗なんで昔っからあの容姿 )