「・・・づ・・ちゃ・・・・・・きて。起きてってば」
「ん・・、さん?え?朝ですか・・?」
「ううん。草木も眠る丑三つ時だよ。でも起きて貰いまーす」
「え?何でですか?」

 真夜中に突然やって来たさんに起こされたかと思えば、彼から言われたのは今一つ読めないもので。思わず「何でですか?」と状況を理解しようと寝起きの呆けた頭を回転させつつ問えば、「悪戯」とにっこり良い笑顔。え、と聞き返す暇も無く、私は未だ寝巻きのまま、幼い悪戯っ子の様に無邪気な笑いを浮かべるさんに手を引かれ自室を連れ出された。
 ――時刻は、さっきさんが言っていた通りの丑三つ時位。空は真っ暗で、皆寝静まる時間帯なので、当然屯所内は静まり返っている。前を歩く彼は何時もと変わらない様子で私に話し掛けてくれているのだが、気になるのは昼間の彼のあの飲みっぷり。あれだけ飲んで、酔っている素振りが全く無いのはある意味凄い。

「さってと。誰の部屋に行きたい?」
「え・・」
「筆と墨汁。分かるでしょ?い・た・ず・ら!君はボクの小姓なんだから、誰か決めさせてあげる」

 口角を上げ、にこりというよりはにやりという感じで笑うさん。彼の笑顔は、兎に角誰かの名前を言わなければ駄目だと私に思わせるものだった。しかし、誰の部屋に行こうか、と言われても。未だ新選組に来て間もない私では気が引けてしまう。況してや、私は彼らから疑われている身。こうしてさんと話し、隣に居るだけでも息が詰まりそうだというのに。ふう、と小さく溜息を吐くと、良い笑顔のさんが視界に映った。彼は、私の言葉を待っているようだ。
 申し訳ないし、誰かの名前を言わないと。

「じゃあ、土方さんで」
「折角なので、斉藤さんを」
「沖田さんはどうですか?」





戯れようか
ぼくとあそぼう!





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